ベロニカ学習帳。

文京なんちゃらのなれの果て

黒笑小説 (集英社文庫)/東野圭吾

ものすごい今さら感漂わせつつ、私にとって初めての東野圭吾
タイトル通り、ブラックでアイロニーたっぷりのユーモア小説を集めた作品集。こういう作品集は三作目だそうだけれど、なんとなくタイトルでこれを選んでみた。で、ひとつも難しいところがないし、おおこの設定面白いなーなんて思わせるものが多く、全部サクサクと読めた。
あーでも失敗したな、というのが正直な感想。どうせ東野圭吾を読むのなら、もっと本領発揮の作品を選ぶべきだった。私にはこの作品集の面白さがあまり理解できなかった。というか、これユーモアなのか。笑え、る……?
ほとんどすべての作品で、主人公は基本的に馬鹿、というか、周囲の誰かとか状況とかいろんなものに踊らされて、カラ回りしているというのがストーリーの大筋となっている。その中で、主人公に葛藤があって戦ったりはしないし、自分で考えて努力して立場逆転などということも考えていない。だから、主人公はただただ周囲から馬鹿にされている(けれど多くの場合、本人は気付いていない)。という状況を描いた作品ばかりである。ということは、人から馬鹿にされている人を指差して笑うのがユーモアなのかね〜などと考えてしまうのは私だけであろうか。まいいか。
あ、一作だけニヤニヤできたのもあった。「シンデレラ白夜行」という作品。シンデレラの裏側、いわゆる魔法として語られている部分のトリック(?)を描いたものなのだが、主人公のシンデレラが初めから計算高く、自分の思い通りになるように話を運び、ラストで一人「してやったり」と微笑むのが気持ちいい。私は、「馬鹿だなー」よりも、「やるじゃねーか」のほうが、笑えるみたい。