ベロニカ学習帳。

文京なんちゃらのなれの果て

花まんま (文春文庫)/朱川湊人

年を挟んで帰省の行き帰り新幹線にて読了。昭和30〜40年代くらいの大阪の下町を舞台として、子供が主人公となっている、少し不思議なお話がいくつか集まった短編集です。どっちかというとホラーじゃなくてファンタジー
どんな時代背景にあっても世の中はすべて正しいことばかりじゃなく、むしろ子供にとっては見てはいけないこと・知ってはいけないことばかりで、だけど子供はそんなこととは関係なく強く健やかに育つ。後ろ暗い背景と無邪気な子供目線で描かれた不思議な物語から私が感じ取ったのは、そんなシンプルな真理だったりします。とてもあたたかいお話ばかりでした。
しかしまあ、そんな背景には土地的にも時代的にもあまり縁のない私に感じられるのは、せいぜい作られたノスタルジーのイメージでしかないし、理解度も浅いのだろうなと思います。表題作「花まんま」では、新幹線の車内にいるにも関わらず読んでいてポロポロ泣いてしまったのですが、それはやっぱりこの物語で主人公が母子家庭&貧乏みたいな背景があってもそれは物語の本質とあまり関係ないからなのかも……と思ってしまったり、します。悲しいな。
でもまあそんな大人のアレを無視しても、よい作品集だったと思います。あえて言うならば、「妖精生物」だけはこの物語を女性の文章で書いたらもっともっと面白く、というかストレートに言えばエロくなるだろうなと思いました。