ベロニカ学習帳。

文京なんちゃらのなれの果て

対岸の彼女 (文春文庫)/角田光代

買うだけで満足して積んでいた文庫本に、ようやく手をつけたよ第一弾。あらすじをかいつまんで言うと、対極に見える二人の女がいて、それはもう完全に陰と陽みたいな真逆の性質を持つのだが、実は根っこに同じものを持っている、みたいな話だ(違うかも……。森絵都さんの解説がとてもよいのでそれを読めば良いと思う)。
しかしまあ、やっぱりこの人の作品は、基本痛いねえ。イタいじゃないですけど、痛いねえ。
この物語はおそらく、私たちは誰もが「ひとりぼっち恐怖症」であるという、それがもう大前提にあって進んでいる。ちょうど豊島ミホさんの底辺女子高生 (幻冬舎文庫)というエッセイも同時期に読み、その中にも同じような表現を多数見つけたんだが、人生経験が未熟なポワポワ人間の私にはイマイチ同意できん。
と、まあ若いころはそう思ってたけど、こういう感覚を多くの人が持っていたらしいことはなんとなく想像できる。イジメって都市伝説じゃねーのかと今でも訝しんでいるフシのある私だって、イジメをする人の気持ちもされる人の気持ちも想像はできる。私は嫌いな人には「あなたが嫌い」と言ってしまうし(言わなくても態度にありあり出てしまうし)、むかつくことはむかつくとはっきり言う(けれど、ありがとうは素直に言えないの…!)、たぶん一般社会においてはすげえ扱いにくい人間で、はっきり言って陰口なんていくらでも叩かれているだろうし、憎まれたり恨まれたり、もしくは存在自体を記憶から抹消されていることもあるだろう。
でも思うんだけど、人間関係って常に1対1だし。私vs皆さんだと思わなければ、別に一人から憎まれたぐらいで世界は終わらない。
ココまで書いて、本当に高校時代の自分がそんなにふてぶてしく生きていたのか疑問に思ったので、初の試みで唐突に「過去日記出し」をしてみる。高校三年生のときの今日の日記を引っ張り出して転載だ。かなり長いので適宜省略しつつ、基本は原文ママケータイ小説も真っ青な文体だよーえーんえーん。

1993.11.26
久しぶりだ。(書くたびにでだしがコレだね)
私は1回ヒサンな状態にオチイったが、今はたち直った。でもさいきん(昨日からだったりスル)すごく楽しい。(中略)今日は4じかんめのLHRでは写真サツエイでバカいっぱいやったし。IからきいたけどAくんが「Sさん*1ってカッコいい」といってたそうだ。うれしーけど男の子にカッコいいといわれるのもふくざつだす。で、5じかんめ音楽の発表のレンシュウしていて、終わってMくんとアルバムのやつ*2やるツモリだったのだがすっかりわすれてて帰ってしまった。(中略)しかし今日はヨビコーで変な友達ができた。(中略)彼がじゅぎょう中ピックを私の下におとして「とって」というのを拾い、休み時間にちょっと話し、授業終わって8:11にのれなかったので8:30発東京行きで休んでたら*3、その人がホームをとーりかかってふとこっちをみてお互い「あっ」て感じで、ボックスの席すわって話していたら(中略)彼はI中出身*4でW氏*5をRockの道にひきこんだ人だったのだ!すごいグーゼン。世界は狭い!彼の名はKくんという。(←忘れないようにメモをしている。)
(中略)しかもH駅でTRAINおりて(かいだんに遠くて)走ってたら、Y*6にまで会ったぞ。会ってお互い「あ」というくちの形をして指さし合ったケドそれだけ。ドアがしまってひきさかれた。ひとこともことばをかわさず、バイバイってした。ケド久しぶりだったのでケッコーうれしい。
とゆーワケでexcitingだったよー。

んー……なんも考えてなさそうだな。受験生なのに勉強もしてなさそうだし。ただ、やっぱり人間関係に悩んではいないようだ。新しい友達とかできてるし(しかしKくんとは、受験が終わった頃に向こうが「電話でいいからエッチしようよ」という電話をかけてきたことから決裂した)。
ただ補足しておくが、私は決して人づきあいの得意なほうではない。こんな私が人間関係で悩まずにいられたのは、決して自分の力ではないと思うのだ。環境に恵まれているというか人に恵まれているというか、中学から大学まで、周囲に優しく聡明な人が多かったおかげで助かったのだと思う(社会に出てから、信じられない人種に何度も遭遇した)。周囲の人が徒党を組んで人をはじくような人ばかりだったら、もしかしたら私だって孤立して寂しい高校生活を送っていたかもしれない。
なんか作品の感想から離れてしまったけれど、たぶんこの作品の小夜子が冒頭でするように、私も子供とか産んでもママ友がうまくつくれずに、子供にも肩身の狭い思いをさせてしまう可能性だって充分にある(なにしろいつも周囲の人に頼ってばかりいるから、自分から上手なアクションが起こせないのだ)。それでもただただ、「気にしなーい」という世にも恐ろしく便利な魔法をすでに身につけてしまったし、それは子供にも継承していくので、だからたぶん明日も大丈夫なのだ。

*1:私の旧姓

*2:なんか卒業アルバム委員というのをやらされていたのでその仕事だと思う

*3:千葉駅から先の下り電車が少ないので、待ち時間は向かいのホームで停車中の総武線快速上りの車内に入って暖をとっている状態

*4:隣の隣ぐらいの中学で、同じ沿線

*5:当時、私が高校で一緒にバンドやってた子で、やはりI中出身

*6:中学時代のクラスメイト