ベロニカ学習帳。

文京なんちゃらのなれの果て

妊娠カレンダー/小川洋子

2004年本屋大賞に選ばれた小川洋子氏の、芥川賞受賞作を今さら(なんで今回の受賞作品を読まないかね、私は…)。小川洋子は大学時代にも幾つか読んだんだけど、どうも好きになれず、ただ独特な人だなと思う。今回もただそう思った。こういう描写が好きという人も多分多いのだけれど、私にはどうもリアリティを感じさせない。そんな会話してるひとどこにもいないってー、というような。会話が胡散臭いと、物語全体が胡散臭いと思ってしまうタイプの読者というのは意外と多くいるものです(そういう人の大方は村上春樹が好きじゃありません、たぶん)。

私の妊娠体験なんて、スーパーで買ってきた新鮮な玉ねぎそのもので、何の書かれるべき要素も含んでいない。その玉ねぎが床下収納庫で人知れず猫の死骸になってゆくところに、初めて小説の真実が存在してくると、私は思う。

この「文庫版のためのあとがき」が一番面白かったで。あと、3篇の短編の中で言うと「ドミトリイ」のコワ肩透かし感がとても良かった。奇妙な話が奇妙な文体に絡んで良い味わいをしたけれど最終的にはリアルに着地したという感じ。
結婚したらいろんなことがおしまいであとはオバサンになっていくだけだと思ってるすべての女子に言いたいけど、人生をおしまいにするのは自分自身なのであって、結婚したくらいで人生のポテンシャルがそう変わるわけがない。この小川洋子の目線みたいなのが無い限りは、結婚しない人生もたいして変わらない。ちなみに私は、今おしまいになりそうなところで踏ん張ってるので、力尽きたら本当におしまいかもしれん(でも結婚しなくても同じだったと思うー)。