ベロニカ学習帳。

文京なんちゃらのなれの果て

ビタミンF/重松清

まだ読んでる途中だけど2つめの「はずれくじ」についてメモ。
重松清の小説は、いつも「良い」ではなく「上手い」と思う。「上手い」というのは文章がということではなく、いやもちろん文章も上手いんだろうけど、それよりも巧妙に人の心に隙入るのが上手い。そんなふうに感じつつも、具体的に何が上手いのか言い表すことができずにいたものが、この作品を読んで解った気がした。
彼の小説では世代観がとても良く書けている。各世代の主立った特徴を抽出して登場人物に投影するのがとても上手い。だから、平均的でありながら平坦ではないお父さん(夫)、お母さん(妻)、子供、同僚、などがリアルに活きてきて、自分のことのように、あるいは身近な友達のことのように読めてしまうんだろうと思った。
作中に阿部くんという人物が出てくる。作品が書かれた2000年現在に、大卒で入社二年目の主人公の部下だから、私と同い年だと思う。これが、言ってることもやってることも給料もらってた頃の私とまさに同じ。細かくは違うところもあるけど、世代による空気とか温度の違いが本当によく解ってないとこういうのって書けないだろうなあと思った。
まあ、そんな話は「はずれくじ」の主題からは大きく逸れているわけで、感想は全部読み終わってから。