ベロニカ学習帳。

文京なんちゃらのなれの果て

神田川デイズ/豊島ミホ

そういえば妊娠後期に読んだ小説のレビュー全然してないな。覚えてる範囲だけでも近々まとめたい。
というわけで久々の読書。Pが4時間くらい昼寝しててくれたので一気に読めた。
豊島さんといえば檸檬のころが最高傑作、と思っている私であるが、この作品はその続編……では決してないけど、檸檬のころのあの子らみたいなの(いわばどこにでもいる地方の進学校の子たち)が東京の大学に行ってからの話で、同じ匂いがする。主人公の違う6つの物語が同じキャンパスの中で少しずつ繋がりながら繰り広げられる、そういう青春オムニバスだ。
左翼の活動サークルにまんまと入ってしまうおぼこい女の子の話が一番はらはらした。が、他の物語を読むと、どうやらサークルも続けつつ学科にちゃんと彼氏ができて大学生活を楽しんでいる様子がわかってホッとできたり。うまく大学に馴染めない子だけでなく、オールラウンドサークルでチャラチャラ遊んでる子の裏なんかも描かれていて面白い。
中でも1話目の「見ろ、空は白む」は、入学早々、早慶戦(とは書かれてないが)のノリについていけず楽しい大学生活から脱落した3人のブサメンが「青春のどん詰まり」で3年も腐り続けたのち、突然お笑いトリオを始めるという突拍子もない話だが、「神田川デイズ」の名にふさわしかったと思う。しかし、童貞メガネーズの命名はあんまりではないか。いや、そのセンスがやっぱり学生ノリって感じでいいのか……。
まあ全体的に、すぐそばにいる普通の大学生の、痛々しく過剰な自意識がリアルに描かれた物語ばかりで面白かった。大学生てのは自意識過剰であるのがデフォであり、むしろ自意識が強いほど皮肉なことに大学生としては平凡なのだなあと今にして思ったりした。あと、豊島さんのプロフィールを知らずとも明らかにプンプン匂う早稲田臭がすごい。
そして最後に。「ググれ」というセリフがなんの解説もなく普通に出てくるのはまだ理解の範疇として、喪男板(という略称は使ってないが)を見ている男子学生や、大学生活板に書き込みする主人公の姿がごく普通に描かれていて、それが今の大学生のリアルなのだろうけど、まあなんつうか、時代が変わったのだなあと感慨深く思うおばちゃんであった……。育児板に書き込みしながら孤独に子育てする新米ママの小説とか、アリなのか?