ベロニカ学習帳。

文京なんちゃらのなれの果て

漢方小説 (集英社文庫)/中島たい子

前から気になってたんだけど文庫本化するまでジリジリ待って、ようやく読んだ。後悔した。これは、文庫本を待たずに読むべきだったわ。
この作品に出てくる登場人物はみんな、少なくとも私にとってはものすごくリアルで、身近な人たちとシンクロする。そんな人たちが、陰ではそれぞれにいろんな問題を抱えてもがいていたり、手近な異性とつがいになりそうだったりしながらもならなかったり、そういう裏はあまり見せずに集まって飲むみたいな空気は、とても肌に馴染む。だけど、そういう空気の分、どうもカタルシスに欠けてしまう気はする。はっきり言って、「名作!」とは思わない。「これがすばる文学賞なのかー」「どっちかっつとエンタメじゃね?」「読後感も軽いよなー」という感想も私の中にある。
けど。それとは別にして、これは三十路を迎えた、あるいはこれから迎えようとしているすべての女子(チャットモンチー的な意味で)(負け犬とか干物女とかいろんな呼ばれかたがあったけれど、つまりは三十路女性ではなく三十路女子なんだと思う)にとってバイブルになるんじゃないかな、と思う。つか、去年原因不明の体調不良に襲われて鬱になっていた自分に読ませたかった。
実際この主人公のように、私もいろんな病院を転々とした。どこにいっても原因不明・経過観察と言われた症状は、年が明けたら自然と治っていたけれど、そのために仕事を辞めたりしたのだから十分に弊害があった。そのときにこの本を読んでいたら、「自分は一体なんの病気なんだ?」と悩まずに済んだし、なんなら東洋医学の方面にも手を伸ばしていただろう。
それにしても、大抵の女の人は三十を超えたあたりで身体の不調が出てくるってのは面白いもんだな。解説で酒井順子さんが人生の「季節の変わり目」と書いているけれど、「三十路女子」的にはたぶん「第三次性徴」期なんだと思う。いろんなことが今までのように行かなくなって(肉体的や物理的に)、だから、いろんなことが恐くなる(心理的に)。こういう時期に女の厄年が設定されているというのは、とても合理的だ。
今日も頑張って生きよう。