ベロニカ学習帳。

文京なんちゃらのなれの果て

ネバーランド (集英社文庫)/恩田陸

全国でも進学校として有名な伝統ある男子校の、学生寮で迎えた冬休み。皆が帰省していく中で「帰れない」、あるいは「帰らない」を選択した3人+通学組なのに寮に居座る1人の男子高校生が、生活をともにすることで互いの秘密を知り、共犯者めいた感覚から新たな関係(ひらたく言ってしまえば友情)を築いていく七日間のお話。
ある種の女子にとっては、もうこの舞台設定だけで非常においしくいただける作品だと思う。事実ほのかなBL要素もあるし、たぶんそういう読者層を意識して書いているんだろう。メインキャストをジャニーズで揃えてドラマになったことがあるようだけれど(観てない)、実際に読みながら「これはジャニーズで実写化したくなる話だなあ」と思ったくらいだ。ちなみに私は、なんとなく嵐のメンバーを脳内キャスティングして読んだ(誰が誰だかは秘密だよ!)。
と、これだけだと非常に爽やかな萌え青春モノという括りになってしまうのだが、実はこちらも前述の「天使の屍」に負けず劣らず重い話だったりする。
彼らは幼い頃に母親の自殺を目の前で見てしまっていたり、父親の不倫相手に誘拐された経験がトラウマになっていたり、離婚直前の両親に振り回されている真っ最中だったり、母と心中した父の本妻に玩具にされてきていたりして、それぞれに苦しんでいる。彼らの場合、子供であるがゆえに大人たちの都合や勝手でそういう人生を背負わされてしまっただけなのだから、せつない。けれど読後感が爽やかなのは、舞台設定が萌えでキャラが立っててBL要素もあるから、ではない(ないよ!)。そんな重いものを背負いながらも強く生きているからだ。あと、有名な進学校だけあってみんな頭が良い、というのも設定として不可欠だ。一人ひとりの秘密が明かされるのが微妙に小出しになっていたり、それぞれの問題が必ずしも解決しない(未消化のまま悲しい結末を迎えたりもする)ことから、カタルシスは若干弱い。でもそれはそれで良いのだ。これはあくまでも、彼らが友情を築き上げる物語として読んでいいのだと思う。
中盤以降、「キャラが一人歩きしだした」感がすごく出てくる。良い意味で。ああこの人はこの少年達を描くのがすごく楽しかったんだろうな、と思いながら読んだ。