ベロニカ学習帳。

文京なんちゃらのなれの果て

AMEBIC (集英社文庫)/金原ひとみ

人間って下手に知能が発達してしまった分、本質的にどうしてもイタい動物だと私は最近すごくよく思っている。で、この作品に描かれているのはそういう意味でものすごく、普通にイタい。人間的にイタい。だからこの作品に描かれているのは、そういう意味でごく当たり前の孤独感というか乖離感というか(私はなんとなくそれを、浮遊感と呼んできたのだけれど)。余程なんにも考えずに生きてる人でもない限り、たぶん誰にでもあるはずの、ものすごく簡単に言えば「一体、自分ってなんなのかよく分からない」という状態。
そんな感覚を、ときには錯乱しためちゃくちゃな文章を用いて、ときには主人公の過剰なまでの食(つまりは肉体)に対する嫌悪を用いて、ときには彼との関係性や会話を用いて、タクシーで演じる彼女を用いて、いやんなっちゃうほど突き詰めたら、こんな作品になるんだろうな、と感じた。
だから、すごくよく理解できるし面白いけど、私はこの作品を好きだとは、言わない。言いたくない。だって、わざわざこんなご丁寧に丸裸にされたら、人間がとてもイタいという事実から目をそらしてなるべく面白おかしく生きようとしてる自分が、なんだか馬鹿みたいじゃんね。
なんて言いながらも、読後感は「うおおお面白かったー!」でした。人に読みなよとお勧めする気にはならないし、こんな作品を書けたらいいなとは思わない、けれど確かに面白かった。ひっそりと、記憶にとどめておきたい作品。