ベロニカ学習帳。

文京なんちゃらのなれの果て

イニシエーション・ラブ (文春文庫)/乾くるみ

帯には「必ず二回読みたくなる小説などそうそうあるものじゃない」、カバー裏にある作品紹介には「(略)青春小説――と思いきや、最後から二行目(絶対先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する」とあって。この煽り文句に釣られて読んでみたわけです、が。普段から、物語を半分くらい読んだ時点で「つい」「うっかり」結末とか解説を読んでしまう癖のある私は、ムズムズしながらもその言葉に従って、結末だけは先に読まないように気をつけました。が。
最後から二行目どころじゃなく、けっこう早い段階から、「ん?」「あれ?」と気づくヒントはたくさん隠されておりまして。私はそのつど、結末はがんばって見ないようにしたけど、その前に書かれていたこととの矛盾点を探しに行ってしまったので(そういう意味で、再読せざるをえない作品というのは真実)(でもこの作品に限らず私はいつもそういう読み方をしてしまうがゆえに大変遅読なわけで)、この主人公はアレなんじゃないかなという予測は容易にできたのだが、そのせいで逆にラストの衝撃をうまく味わえなかったわー。まあ煽りが過ぎたってことじゃないでしょうか。そこまで煽られなければ、警戒も注意もしないので簡単に騙された気がする。
結論、私の感じた矛盾自体が作品のトリックってわけでした。精一杯のネタバレ。
ところで、ラストに「〜再読のおともに〜」という解説がついているのは文庫版だけなのだろうか。正直言って、この解説イラネ。むしろ、この解説がなけりゃ読みこなせない人は、普通の青春恋愛小説として楽しめばいいと思うよ。事実、私ら昭和50年生まれ組が中学時代くらいに憧れとして持っていた80年代の青春が生々しく描かれており、その演出としての「古きよきカセットテープ風構成」や(これはトリックの演出にもなっている)、いろいろな舞台背景や小道具は、とてもまぶしいです。そこをちゃんと成り立たせながら、トリックにより二通りの楽しみ方ができるというのは、とても巧いと思う。ノーヒントでも、どんなに鈍い読者でも、最後の二行目では「え」と思わざるを得ないのだから、それでいいよ。
なんにせよ、世界で一番ミステリーなのは、カマトトぶってるびっちだという結論で、ひとつ。「便秘」発言とか、真相がわかると怖すぎる。