ベロニカ学習帳。

文京なんちゃらのなれの果て

律子慕情/小池真理子

一人の少女が恋と大切な人の死(と、死者との不思議な出会い)によって成長していく短編連作の物語。すげーよかった。
以前から恋愛遍歴みたいな小説には興味があったんだけど、ただの恋愛遍歴語りで済まさないための手法がこの作品のありとあらゆるところにちりばめられていて、色々考えさせられた。当然のことだけれど、恋愛と言ってもそれは育った環境やその人の個性によって大きく変わってくるもので、単純に並べ立てられない。結局、人生を描くことになる。ひょっとして、ひとつの恋愛だけを切り出して書く恋愛小説なんて何も意味がないんじゃないかとすら思ってしまったくらい、そこにハッキリとした芯を感じる。
残された者の感傷を書いた作品は好きじゃないけれど、律子が出逢う死者は皆、若くして死んでいても満たされていて、こういう死の描かれかたは良いなあと思った。
あと、戦後日本で一番色濃い時代(あの時代はこんな人がたくさんいて国全体がこういうムードだったね、と言えるような時代)ってやっぱり60年代〜70年代なんだろうなぁと思った。幼児期にほんの少しばかりその空気を吸ったことしかない私には、とても羨ましい。