ベロニカ学習帳。

文京なんちゃらのなれの果て

羆嵐/吉村昭

前々から読まねばと思っていながら今さら。北海道で実際に起きた獣害史上最大の惨劇を描いた作品。実は去年その現場に行ったのですが、この作品を読んでいないし事件のあらすじについてもろくに知らないクセに、怖くて車から出られなかったのは私です。
あらすじは、冬ごもりしそこねた巨大なヒグマが空腹に耐えかねて小さな村でつつましく暮らしていた女子供などを襲い、6人(+1人の胎児)が死亡し、そのヒグマを仕留めるまでのお話。淡々としかつ緻密な文体は確かに恐怖感を煽るものの、意外と怖くはなかった。というのも、私はただ人がクマに喰い殺されて小さな村が壊滅状態になる物語だとばかり思っていたためで、後半はクマ退治の話だった(といっても、もちろん大きな自然の中での人間のちっぽけさを突きつけられたりするわけですが)ので、そちらに夢中だった。区長ガンバレ、銀四郎あんたやっぱりプロだよ、みたいな、むしろアドベンチャーものとして読んでいた気がします。ちょっとスレた読者ですみません。でも現場に行った恐怖に比べれば小説なんて、というのもある気がする(現場には普通に『熊出没注意』の看板が立っていたよ)。
それでも驚いたのは、まだ開拓間もないような村の話なのでとても昔のことのように思えるけれど、ちゃんと警察の組織もしっかりしているし、旭川には自衛隊の前身みたいなの(よく理解してないけど多分そんなやつ)が既にあるし、鉄道も走っているところがある、というところ。大正時代はそんなに昔じゃないんだなー。